床ずれ(褥瘡 じょくそう)の原因は?
持続的な2時間以上の局所の圧迫、シーツやオムツなどによる摩擦やズレが直接的な原因とされています。持続的な圧迫によって発生する皮膚やその下の損傷のすべてのことをいいます。 (一日でできた褥瘡の写真↓)
どんな人にできやすいの?
圧迫や摩擦、ズレが起こると褥瘡ができてしまいます。以下のことが当てはまる方は特に褥瘡ができやすいので、予防ケアを行う必要があります。
・ 知覚障害や運動障害がある
・ 年齢による皮膚の変化がある(皮脂分泌低下・発汗低下)
・ 摩擦・ズレ(ギャッジアップ・シーツのしわ)が起こりやすい状況である
・ 失禁(尿・便)湿潤(発汗)がある
・ 局所の皮膚疾患(皮膚感染症・炎症性皮膚疾患)がある
・ 低栄養(低アルブミン血症・貧血)の状態
・ やせ(皮下脂肪の減少・骨突起)の状態
・ 日常活動性低下・糖尿病・骨粗鬆症・心不全など、基礎疾患がある
・ 抗腫瘍薬・ステロイド剤を内服している
褥瘡のできやすい部位は?
予防ケア大事なことはこの5つ!
1、圧迫をなくす!
2、摩擦ズレを予防する!
3、湿潤からの皮膚の保護する!
4、清潔・血行の促進につとめる!
5、栄養を十分にとる!
1、圧迫をなくすことについて
持続的な圧迫は褥瘡の原因となるだけでなく、悪化させたり、治療を長引かせます。治療の第一歩は圧迫の除去です!
1-1 適切な体圧分散用具を使う
圧迫軽減のため、様々な体圧分散用具があります。専門家とともに適切なものを選択しましょう。
1-2 好ましい体勢をとる
褥瘡部は下にせず、かかとは床から浮かせる体位を工夫しましょう。
30度の側臥位が褥瘡予防に効果的です。完全に横を向けるのは肩や腰骨の部分に褥瘡ができやすいのでやめましょう。
2、摩擦やずれの予防について
摩擦やずれが褥瘡の原因になります。予防することが大切です。
2-1 体位変換をする
2時間ごとの体位変換が望ましいとされています。ご家族の負担のない範囲で行いましょう。
2-2 シーツのしわをなくす
体の向きを変えたり、ギャッジアップをしたときはしわによって圧迫がおこらないように必ず衣類やシーツを伸ばしましょう。
ただし、衣類やシーツを引っ張ると、摩擦やずれの原因になりますので体を浮かしてから伸ばしましょう。
2-3 摩擦から保護する
褥瘡やオムツかぶれのない健常な皮膚を保護するには、油性の軟膏や撥水性の皮膚保護剤が有効です。
また骨突起部の保護には半透明フィルムを利用することで摩擦の予防になります。
使用は専門家の指示に従ってください。
2-4 マッサージについて
創部や発赤部のマッサージは絶対にいけません!
皮膚の下の骨突起部に近い部分は皮膚よりも広い範囲で大きな力が加わっている上に損傷しやすい部分でもあります。
皮膚には単に発赤が認められるだけでも、骨に近い軟部組織は大きな損傷を受けているので、マッサージによって、軟部組織の損傷と炎症をさらに進行させてしまいます。
ですが、損傷部以外のマッサージは血流改善に大変効果的です。
我流で行わず必ず専門家である、あんまマッサージ指圧師に相談してください。
3、 湿潤からの皮膚の保護について
3-1 尿失禁・便失禁
尿失禁は適切な治療やケアの介入を行うことで失禁予防も可能となる場合があります。
収尿器(尿器)を使用して湿潤を予防する方法もあります。
便失禁は便の形状を硬めにコントロールし、定期的に排便させることができます。
医師に相談し、治療やケアの介入を考慮しましょう。
3-2オムツ使用時
尿が逆戻りしない高吸収性ポリマー入りの紙おむつを使用し皮膚がふやけるのを防ぎましょう。
また、何枚も重ねて使用すると圧力が高くなり、通気性が悪くなります。オムツ内のポリマーは
尿を含むと硬くなり、圧迫の原因になりますので濡れるごとに交換しましょう。
4、清潔・血行の促進につとめる!
4-1 清拭・スキンケア
創部は洗浄するものであって、清拭するものではありません。
清拭によって創に細菌をこすりつけることになってしまいますし、創部の細菌や膿を周囲皮膚に拡げる結果にもなってしまいます。
さらによくないことに、摩擦を加えることにより弱くなっている組織を傷害し、肉芽組織や再生上皮に損傷を加えてしまいます。
褥瘡の周囲の皮膚に対しては清拭や洗浄を行い清潔にし、身に着けているものも清潔にする必要があります。
4-2 入浴
褥瘡ができているからという理由で、入浴を中止するのはかえって逆効果です。
褥瘡患者こそ皮膚の清潔が必要であり、入浴によって血行促進も期待できます。
壊死物や滲出液があるときは、創が汚染されないようにポリウレタンフィルムドレッシングか閉鎖性ドレッシングで密閉して入浴するとよいでしょう。
特に浴槽を共同で使用するときは、感染予防にもなります。専門家に相談してください。
4-3 下肢の保温
かかとなど足に褥瘡がある場合は、保温や洗浄をして血行を促進させるようにしましょう。足浴でも全身の血行をよくする効果があります。
靴下を着用する場合はゆったりしたものを選択し、足の血行を妨げないようにしましょう。
5、栄養を十分にとる!
5-1 食事
十分なエネルギー食と良質のたんぱく質、ビタミン、ミネラルを摂取することが重要です。
5-2 水分
寝たきりなどで失禁を恐れ水分摂取を控えると、水分不足から濃縮尿となり、膀胱粘膜を刺激し、かえって失禁や頻尿をまねく結果になることがあります。
水分はこまめに摂取する必要があります。
してほしいこと してはいけないこと


適切な体圧分散寝具の使用 円座の使用
体位変換 衣類・シーツを引っ張る
体を浮かす 赤くなった部分のマッサージ
30度での体位変換 熱い温度の入浴
90度での座位姿勢 皮膚をこする
入浴・足浴 皮膚の乾燥(日光浴)
保湿クリームの使用 ドライヤーで乾かす
失禁予防 オムツの重ねすぎ
撥水性クリームの使用
食事や水分摂取の工夫
褥瘡(床ずれ)Q&A
Q体圧分散用具を使うと褥瘡はできないの??
用具を使用しても効果的に体圧が分散できていないと褥瘡の発生や悪化につながります。使用開始や使用中に確認しましょう。確認方法は専門家に相談してください。
Q体圧分散用具ってどこで入手できるの?
用具は購入できますが、介護保険などの利用で借りることもできます。どちらが適切か判断に困ったら、専門家に相談しましょう。
Q円座は予防にいい?
円座は圧迫除去に不適切です。かえって逆効果になることがありますので、安易な使用は要注意です。
Q横向きはどうしたらいいの?
30度の側臥位が褥瘡予防に効果的です。完全に横を向けるのは肩や腰骨の部分に褥瘡ができやすいのでやめましょう。
30度にあわせた褥瘡予防製品を利用すると便利です。
Q体位変換は何時間ごとにするの?
2時間ごとの体位変換が望ましいとされています。ご家族の負担のない範囲で行いましょう。
Qベッドを上げるときはどうしたらいい?
ギャッジアップは30度までが良いと言われています。
ベッドを30度以上ギャッジアップすると体は足の方向にずり落ちていきます。
このときに摩擦やずれを生じ褥瘡発生の原因となります。膝をまず曲げてからギャッジアップし、角度は30度までとするとよいでしょう。
また長時間のギャッジアップは、殿部に大きな体圧がかかるので避けたいものです。
ただし脳血管障害の急性期には、膝を曲げてギャッジアップされた姿勢は、健側の上下肢の動きまで制限しますので適しません。
Q正しい座り方は?
股関節、膝関節、足関節がそれぞれ90度になる姿勢といわれています。
体を支える面積が広くなり、骨突起部に圧迫がかかりにくいからです。
Q座るとき気をつけることは?
自分で体を動かせる方は、15分ごとに腕で上半身を持ち上げ、お尻を浮かせましょう。
自分で体を動かせない方は手伝ってもらい、体を浮かせるか、座る時間を1時間以内にとどめ、ベッドに寝る、向きを変えるなどをします。
また、クッションや車椅子を利用し、正しい姿勢をとれるように工夫します。
Q体位変換って一人で行えばいいの?
可能であれば2人以上で、患者さんを持ち上げるようにして向きを変えましょう。
Qどんなシーツがいいの?
やわらかすぎず、復元力のあるものを選択しましょう。
ラバーシーツは、通気性が悪く皮膚が湿りやすいうえ、ベッドやエアマットの体圧分散効果を半減させ、血行が阻害されることがあります。
特に仙骨部への影響が大きいです。ラバーシーツは用いず、吸水性があり熱放散性のあるずれしわ予防体位変換マットを使用するとよいでしょう。
Q日光浴っていいですか?
褥創の日光浴は治癒を遅らせる原因となります。
Q褥瘡があっても入浴できますか?
はいできます。褥瘡ができているからという理由で、入浴を中止するのはかえって逆効果です。
褥瘡患者こそ皮膚の清潔が必要であり、入浴によって血行促進も期待できます。
壊死物や滲出液があるときは、創が汚染されないようにポリウレタンフィルムドレッシングか閉鎖性ドレッシングで密閉して入浴するとよいでしょう。
特に浴槽を共同で使用するときは、感染予防にもなります。専門家に相談してください。
Q入浴できないときはどうするの?
全身状態が許せば、入浴の回数はできるだけ多くとりたいものです。
しかし入浴ができないときには、全身清拭、部分清拭、足浴を行います。
清拭は重症の患者さんにも行えますし、清拭時に全身の観察もできます。陰部や肛門部はできるだけ毎日洗浄しましょう。
Q入浴はどんな場合でも効果があるの?
入浴は褥瘡が感染していない時に有効です。
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